「スター・ウォーズ」シリーズのドラマ「オビ=ワン・ケノービ」(OBI-WAN KENOBI: LIMITED SERIES)が、2022年6月22日、最終話の第6話が、ディズニー+で独占配信されました。
第1話から第3話の前半は、すっかり弱気になり、ジェダイとしての強さも誇りも失ったかに見えたオビ=ワンでしたが、シリーズ後半になり、再び強さを取り戻す姿は、当然そうなるだろうと予想できる「予定調和」的ストーリーながら、わかっていても、逆に期待に応えてくれるからこそ、ファンとしては楽しんで見ることができました。
そして子供時代のプリンセス・レイア!
容姿から性格、立ち居振る舞いまで、本編のレイアを彷彿させ、ノスタルジックな感傷に浸らせてくれましたが、それ以上に、オビ=ワンに次いで重要な登場人物として、物語を最後まで牽引してくれました。
彼女なしで、「オビ=ワン・ケノービ」の成功はなかったでしょう。
さらにダース・ベイダー!
まさか彼が出てくるとは知らなかったので、登場した際には驚きました。
しかも、オビ=ワンとの直接対決を二度もするとは。
そしてそして、最後にはマスター・クワイ=ガンまで!
本ドラマは、「エピソード3/シスの復讐」(Episode III/Revenge of the Sith)と「エピソード4/新たなる希望」(Episode IV/A New Hope)を繋ぐお話ですが、ローグ・ワン(Rogue One)のように完全なサイドストーリーではなく、本編の主要登場人物が大勢登場する「エピソード3.5」ともいえる見応えあるお話でした。
しかし、海外の反応は全般には好反応ですが、ファンの期待の高さゆえのネガティブ反応もあるようです。
本記事ではそのいくつかを紹介します。
米国最大の映画レビューサイト:Rotten Tomatoes
海外の反応を見るのに今回使用したのは、米国最大の映画レビューまとめサイト Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)です。
このサイトの何が優れているかというと、
- 批評家の評価(Tomatometer)と一般人の評価(Audience score)を集計し、評価結果をそれぞれ一目でわかるようにしている点
- 個々の評価の元記事やコメントのリンクが貼られているので、個々の評価内容まで簡単に確認できる点
です。
批評家評価は好評価は新鮮なトマト(Fresh tomato)と悪評価の腐ったトマト(Rotten tomato)に二分され、その比率がトマトメーターとして示されます。
一般人評価は星の数(1つから5つ)で評価され、星3.5以上の評価をした人の割合が示されます。
OBI-WAN KENOBI: LIMITED SERIESの評価は、
- シリーズ全体の批評家評価:290評価中242が好評価vs48が悪評価、平均評価は10段階で6.6、総合指標67%
- シリーズ全体の一般人評価:10,166人の平均評価は星3.5(星1〜5で評価)、星3.5以上の評価をした人の割合は63%
- Ep.1の批評家評価:88評価中76が好評価、平均評価7.6、総合指標86%
- Ep.2の批評家評価:90評価中80が好評価、平均評価7.6、総合指標89%
- Ep.3の批評家評価:29評価中25が好評価、平均評価8.1、総合指標86%
- Ep.4の批評家評価:26評価中16が好評価、平均評価7.0、総合指標62%
- Ep.5の批評家評価:24評価中20が好評価、平均評価8.0、総合指標83%
- Ep.6の批評家評価:25評価中21が好評価、平均評価8.2、総合指標84%
全体に好評価ですが、やはり批判的な評価も相応にあることが感じられます。
それでは、具体的な評価コメントをみてみましょう。
ネガティブ・コメント
トップ批評家であるEntertainment Weekly/Darren Franichの評価はCーと低評価です。
Rotten Tomatoesのページに掲載されたコメントは
Is this Star Wars? Or is it only what remains?
(これはスター・ウォーズか?それともその残骸か?)
https://www.rottentomatoes.com/tv/obi_wan_kenobi/s01
と厳しい一言です。
リンク先の元記事のFull reviewを読むと、記事タイトルでは
A mesmerizing Anakin moment couldn't fix a galaxy of plot holes
(アナキンは魅惑的で素晴らしいが、「銀河」を構成の穴から修復することはできなかった)
https://ew.com/tv/tv-reviews/obi-wan-kenobi-review-disney/
と、「構成」に無視できない「穴」があり、それが全体の質を落としていることを指摘しています。
具体的には
- シンプルな空間的のロジックが完全に無視されている。
- 主な登場人物たちがお互いに相手をほぼ殺すところまでいきながら、その後、相手が回復するまでどこかへ行ってしまう。
などです。
また、The Ringer/Justin Charityは
‘Obi-Wan Kenobi’ Embraced the Prequels. Disney Still Doesn’t Understand Them.
(オビ=ワン・ケノービはEp1からEp3の三部作を内包するが、ディズニーはそれを理解してていない。)
https://www.theringer.com/star-wars/2022/6/23/23180029/obi-wan-kenobi-prequels-nostalgia-disney-ewan-mcgregor
と、ディズニーの制作方針を批判しています。
Ep7からEp9の三部作は大人向け、Ep1からEp3の三部作は子供向け、オビ=ワン・ケノービはEp1からEp3をみた当時の子供、つまり30代を意識している。スターウォーズは興行的には成功しているが、全世代向け制作というアプローチはうまくいっているとはいえない。
ポジティブ・コメント
ポジティブ・コメントも、手放しで絶賛というわけではありません。
The Verge/Andrew Websterは
Obi-Wan Kenobi is entirely predictable - But that doesn’t make it any less fun.
(オビ=ワン・ケノービのストーリーは全体に予測可能だが、それが物語を面白なくしているわけではない)
You may know where the story is headed, but the journey is still worth it.
(物語がどこに向かっているのかは簡単にわかるが、その旅は依然として価値がある。)
https://www.theverge.com/23178299/obi-wan-kenobi-season-1-review-disney-plus
と、ストーリーの結末が分かっていることはマイナスとしながらも、物語自体は面白いと好評価をしています。
オビ=ワン・ケノービは、エピソード3とエピソード4の間のお話です。
だからどんなにヤング・プリンセス・レイア・オーガナがピンチになっても絶対助かるし、オビ=ワンとダース・ベイダーがライト・セイバーで対決してもどちらも決して死なないとみんな分かっています。
ただそうであっても、やはりハラハラする展開が続き、緊張感が維持されているとし、全体としては高い評価を下しているのです。
But Why Tho?/Kate Sanchezも好評価です。
Obi-Wan Kenobi as a series may not be necessary for every fan, but its little moments of connection, love, anger, and grief work to create a series that has more heart than spectacle.
(オビ=ワン・ケノービは全てのファンのための物語ではないのかもしれない。しかし、物語を繋ぐ愛、怒り、悲しみは、スペクタクル以上に物語を心に響くものとしている)
https://butwhythopodcast.com/2022/06/23/obi-wan-kenobi-review-disney-plus/
Polygon/Joshua Riveraも、
Obi-Wan was an uneven show that felt more human than Star Wars has in years.
(オビ=ワンは近年のスターウォーズ作品と違い、より人間的な面を持っている)
https://www.polygon.com/reviews/23180150/obi-wan-kenobi-review
と人間的な物語と好評価をしています。
マンダロリアンやボバ・フェットゥなど最近のスピンオフ作品は仮面をかぶっていましたが、オビ=ワンは素顔であるということだけでなく、内容的にもより人間性に焦点を当てた作品といえます。
まとめ
オビ=ワン・ケノービ、賛否両論ありますが、ネガティブ・コメントもよく見ると、期待が高いゆえのコメントのようです。
本編は完結しましたが、ディズニーは、本編の隙間を埋めるスピンオフ作品をまだまだ作り、スターウォーズ世界をこれまで以上に重層的なものにしていくと思われます。
まだまだ目が離せませんね。