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ニュースで英語!:米大統領就任式での詩の朗読で一躍脚光アマンダ・ゴーマンの詩”The Hill We Climb”

2021年1月21日、米国会議事堂への暴徒乱入事件を受け、緊張感漂う中、バイデン新大統領の就任式が行われました。

米国社会を覆う深い分断をどう統合し、団結していくのか、新政権は、立ち上がりから重い課題に直面しているといえます。

そうした中、就任式で詩を朗読したアマンダ・ゴーマン(Amanda Gorman)さんが脚光を浴びています。

大統領就任式での詩の朗読

そもそも、大統領就任式で詩を朗読する慣習があるというのは、今回初めて知りました。

調べてみると、常に行われているわけではなく、今回が6回目、内2回は同じ大統領の再選時なので、招待した大統領は4人のようです。

1回目がJohn F. Kennedy(1961)、詩人はRobert Frostで、詩は”The Gift Outright”。

2回目と3回目がBill Clinton(1993, 1997)。2回目が、Maya Angelou, “On the Pulse of Morning”。3回目が、Millar Williams, ”Of History and Hope”。

4回目と5回目がBarack Obama(2009, 2013)。4回目が、Elizabeth Alexander, “Praise Song for the Day”。5回目が、Richard Blanco, ”One Today”。

そして今回の6回目がJoe Biden(2021)。Amanda Gormanで”The Hill We Climb”。

出所:https://poets.org/inaugural-poems-history

いずれも民主党の大統領、かつ比較的最近の大統領というところに、政党カラーを感じます。

アマンダ・ゴーマンさんとは

アマンダ・ゴーマン(Amanda Gorman)さんは、今回22歳の若き詩人として注目されていますが、一体、どういう経歴なのでしょうか?

彼女は、1998年生まれ、カリフォルニア州ロサンゼルス出身。

滔々と朗読する姿からは信じられませんが、幼少時は発生障害を抱えていて、それを訓練で克服したようです。

また、シングルマザーで教師の母親に励まされて、読書に没頭したようです。

ハーバード大学在学中の2015年に最初の詩集を発表。2017年、米議会図書館によって新設されたNational Youth Poet Laureateプログラムの第1回受賞者となったことで注目を浴びるようになります。

出所: https://ja.wikipedia.org/wiki/アマンダ・ゴーマン

今回の朗読は、米議会図書館で詩を朗読する映像を観たファーストレディのジル・バイデンさんがゴーマンさんに打診し実現したようです。

朗読の動画

朗読の動画は、YouTubeにいろいろとアップされています。

自動字幕機能を使うと、聞き取れない単語も確認できますので、シャドーイングにも便利です。

5分余りのスピーチですので、繰り返し聞くにも適当な長さです。

BBCニュース(日本語版)のページには、日本語字幕付きの映像も掲載されています。

https://www.bbc.com/japanese/video-55761031

TEDにも掲載されていますので、TEDアプリをスマホにダウンロードしている人は、TEDでの視聴がオススメです。
TEDには、彼女のTEDでのスピーチのビデオも掲載されていますので、こちらも併せて視聴すると、彼女の考え方がよく理解できると思います。

黄色の衣装

今回の大統領就任式でも、上のTEDのスピーチでも、アマンダさんは黄色の衣装を着ています。

黄色は彼女にとって何か特別の意味があるのか気になり、ちょっと調べてみました。

ビジネス・インサイダーの記事によると、ファーストレディのジル・バイデンさんが、アマンダさんに朗読を依頼した際、2017年の米議会図書館での朗読の際に着ていた黄色の衣装が印象的だったと話したことから、今回も黄色の衣装にしたようです。

詩を朗読しながら感情や情報を伝えることは重要、と彼女は語っていルようです。

黄色の衣装もまた、彼女のメッセージの一部なんですね。

“The Hill We Climb” を読んでみよう!

それでは、”The Hill We Climb”「私たちが登る丘」を読んでみましょう。

気になるフレーズ、覚えたいフレーズはマーカー表記しています。

Mr. President, Dr. Biden, Madam Vice President, Mr. Emhoff, Americans, and the world.

大統領閣下、副大統領閣下、エムホフさん、米国民の皆さん、そして世界中の皆さん

大統領への呼びかけは通常Mr. Presidentですが、バイデン大統領は法務博士号を取得しているので、ここではMr. President, Dr. Bidenと呼びかけています。

またハリス副大統領は女性なのでMadam Vice Presidentとしています。Ms.やMrs.ではなく、Madamなんですね。

Mr. Emhoffはハリス副大統領の夫です。

「世界中の皆さん」と日本語では訳した方が自然ですが、原文では”the world”と簡潔に言い切っているところが耳あたりがいいですね。

When day comes, we ask ourselves, where can we find light in this never ending shade?

朝が来ると自問する。この果てしない影の中のどこに光を見つけることができるのかと。

“day“はここでは「日中」の意味。日中が始まるのは朝なので、「朝が来ると」。

never endingは「決して終わりのない、果てしない」。映画にもなったミヒャエル・エンデの”Never Ending Story”の邦訳は「果てしない物語」です。

まず冒頭は、絶望と不安を表す印象的なフレーズで始まります。

The loss we carry, a sea we must wade. 
We’ve braved the belly of the beast.
We’ve learned that quiet isn’t always peace,
and the norms and notions of what just is, isn’t always justice.

私たちが抱える喪失感、私たちが苦労して進まなければならない海。
私たちは獣の腹に勇敢に立ち向かった。
私たちは、平静が必ずしも平和ではないと学んだ。
そして、現状をただそういうものだと認めてしまう規範や考えは、必ずしも正義ではないと学んだ。

“wade”は「(水の中などを)苦労して進む」。

”belly”は「腹、胃、食欲」。”berry”「ベリー」と間違えやすいので注意してください。
“brave”は「〜に勇敢に立ち向かう」
“belly of the beast”は、旧約聖書で、神の言いつけに背いた預言者ヨナが大きな魚に飲み込まれてしまうことからの引用です。
“Braved the Belly of the Beast”は、単語の頭のBで韻を踏んでいます。

“norm”は「規範、基準」。”notion”は「意見、見解」。
“not always”は「いつも〜というわけではない、必ずしも〜ではない」

”what just is”「ただそうある状態、そういうもの、現状あるがままの状態」 “justice”「正義」は、韻を踏んでいます。
そういうものだと諦めてしまうこと、それで表面的には平静であったとしても、それは必ずしも正義ではない、ということです。

“We’ve braved…”, “We’ve learned…”とも現在完了形を使うことで、最近の出来事(議会襲撃事件)を踏まえた臨場感ある表現となっています。

And yet the dawn is ours before we knew it. 
Somehow we do it.
Somehow we’ve weathered and witnessed a nation that it isn’t broken, but simply unfinished.

しかし、そうとは気づかなかったが、夜明けは訪れた。
何とか、私たちはやってのける。
何とか、私たちは切り抜けた。
そして、国家は壊れていない、単に未完成なだけだということを目の当たりにした。

”dawn”は「夜明け」。

”somehow”は「何とかして」。

”weather”は「(困難などを)乗り越える、切り抜ける」。
”witness”は「経験する、直面する、目の当たりにする、目撃する、証言する」。

”unfinished”は「未完成の、不完全な」

“Not Broken, But Simply Unfinished”「壊れていない、単に未完成なだけ」は、記事の見出しにもなっていますし、TV映像でもよく引用されているシーンです。

We, the successors of a country and the time where a skinny Black girl descended from slaves and raised by a single mother can dream of becoming president only to find herself reciting for one.

私たちは、この国と時代の継承者だ。そこでは、奴隷の子孫である黒人の、シングルマザーに育てられた痩せっぽちの少女が、大統領になることを夢見ることのできる。そして、その彼女は今、大統領のために詩を朗読している。そんな国と時代だ。

“recite”は「朗読する」
“reciting for one”は「大統領のために詩を朗読する」で、“one”は直前の“dream of becoming president”を受け「大統領」を意味します。

この文の主文は”We (are) the successors”で、”where”以下が、”a country and time”を延々と説明し、”only to find”の主語は”a skinny Black girl”となります。

And yes, we are far from polished, far from pristine, but that doesn’t mean we are striving to form a union that is perfect.
We are striving to forge our union with purpose
,
to compose a country, committed to all cultures, colors, characters, and conditions of man.

そしてそう、私たちは洗練さや純粋さとはほど遠い。しかし、私たちは完璧な団結を作ろうとしているわけではない。
私たちは少しずつ団結を築きあげようと努力しているのだ。
人間の全ての文化、肌の色、特性、状況を約束する国を作るためという目的を持って。

”polished”は「洗練された、上品な、非の打ち所がない」。
”pristine”は「(文明などに)汚されていない、純粋な」。

”strive”は「(達成しようと)努力する」。
”forge”は「築く、構築する、鍛造する、少しずつ前進する」。

”compose”は「作る、構成する、」。
“commit”は「約束する、責任を持つ」。

And so we lift our gaze, not to what stands between us, but what stands before us.
We close the divide because we know, to put our future first, we must first put our differences aside.

そして、私たちは目を上げる。私たちの間に立つものにではなく、私たちの前に立つものに。
そうすれば、分断を終わらせることができる。なぜなら、私たちは、私たちの未来をまず最初に置くためには、まず私たちの違いを横に置かなければならないということを知っているから。

”lift”は「持ち上げる」。
”gaze”は「注視、じっと見ること」。
“lift one’s gaze”で「目を挙げる」。

”put aside”は「横に置く」。

We lay down our arms so we can reach out our arms to one another. 
We seek harm to none and harmony for all.

武器を降ろそう。お互いに手を取り合うために。
誰かに害をなすのではなく、全員の調和を探そう。

ここで最初の“arms”は「武器」、次の”arms”は「腕」を意味します。

また最初の”harm”は「害」、次の”harmony”は「調和」を意味します。

どちらも、韻を踏んだ表現ですね。

Let the globe, if nothing else, say, this is true.
that even as we grieved, we grew.
that even as we hurt, we hoped. 
that even as we tired, we tried
,
that we’ll forever be tied together victorious.

少なくとも、地球に、これは真実だと言ってもらおう。
私たちは、悲嘆にくれながらも成長したと。
私たちは、傷つきながらも希望を持ったと。
私たちは、疲弊しながらも挑戦したと。
私たちは、勝利の中で永遠に結びついていると。

”if nothing else”は「少なくとも」。

”even as”は「〜にもかかわらず、〜なのに、〜と同時に、〜とともに」。
“that even as”の繰り返しが印象的です。

“grieved”と”grew”、”hurt”と”hope”、“tired”と”tried”はそれぞれ対照をなす言葉でかつ韻を踏んでいます。

Not because we will never again know defeat, but because we will never again sow division.

もう決して敗北を知ることがないだろうからではなく、分断の種をまかないから。

”sow”は「種をまく、植え付ける」。

Scripture tells us to envision that everyone shall sit under their own vine and fig tree and no one shall make them afraid.

聖書はいう。誰しも自分の葡萄といちじくの木の下に座り、誰も恐れたりしない。そんなことを思い描いてみなさいと。

“scripture”は「聖書」。
”envision”は「(将来起こりうる良いことを)想像する、思い描く」。

”vine”は「葡萄の木」。
“fig”は「いちじくの木」。

葡萄といちじくの木の話は、旧約聖書のミカ書4.4“but they shall all sit under their own vines and under their own fig trees, and no one shall make them afraid“の引用で、「我が家で安全に過ごすこと」を意味します。ジョージ・ワシントンも何度も引用したそうです。

https://www.mountvernon.org/library/digitalhistory/digital-encyclopedia/article/vine-and-fig-tree/

If we’re to live up to our own time, then victory won’t lie in the blade, but in all the bridges we’ve made.
That is the promised glade, the hill we climb, if only we dare.
It’s because being American is more than a pride we inherit.
It’s the past we step into and how we repair it.

もし私たちが自分たち自身の時代を生きるのであれば、勝利は、刃の中にではなく、私たちが作った全ての橋の中に存在するだろう。
それこそが約束の地、私たちが登る丘だ、もし敢えて登るのであれば。
アメリカ人であることは、私たちが受け継ぐ誇り以上のものだ。私たちが足を踏み入れた過去であり、どうやってそれを修復するかだ。

”live up to”は「〜に沿う、〜に従って行動する、〜に応えて生活する」。

”glade”は「低湿地、林の中の空き地、明るく開けた場所」。”grade”「等級」と間違えやすいので注意してください。
“promised glade”で「約束の地」。
“glade”は先の”blade”との対照をなす韻にもなっています。

詩のタイトルである”the hill we climb”は「私たちが登る丘」。

We’ve seen a force that would shatter our nation, rather than share it, would destroy our country if it meant delaying democracy.
And this effort very nearly succeeded, but while democracy can be periodically delayed, it can never be permanently defeated
.

私たちは、私たちの国を分つのではなく、打ち砕こうとする勢力をみてきた。民主主義を遅らせることを意図するものであるなら、私たちの国家を打ち壊しただろう勢力を。
この試みはほとんど成功しそうだった。しかし、民主主義は時に遅れることはあっても、永遠に負けることはない。

”shatter”は「打ち砕く、壊滅させる」。

In this truth, in this faith we trust for while we have our eyes on the future, history has its eyes on us. 
This is the era of just redemption. 
We feared it in its inception.
We did not feel prepared to be the heirs of of such a terrifying hour, but within it, we found the power to author a new chapter,
to offer hope and laughter to ourselves.

私たちが信じるこの真実と信念の中、私たちが未来に目を向ける一方で、歴史は私たちを見張っている。
今は償いの時代だ。
最初、私たちは恐れていた。
私たちは、そんな恐ろしい時間の継承者となることの準備ができていなかった。しかし、その中で、新しい賞の作者となる力を見つけた。
私たち自身に希望と笑いを届けるための。

“while we have our eyes on the future, history has its eyes on us”は、米国建国の父の一人であるAlexander Hamiltonを描いたミュージカル”Hamilton”の中で、George Washingtonが歌う
“History Has It’s Eyes on You”からの引用です。

Hamiltonは、アマンダさんが発話障害克服のための訓練に使ったもので、特別の意味を持つ、だから朗読の中でHamiltonからの引用をしたと、彼女自身が語っています。

彼女は自身のTwitterで2つの引用をしたと言っていますが、もう一つの引用は、先程の”sit under their own vine and fig tree“です。この言葉はGeorge Washingtonがよく使った言葉として知られています。

https://edition.cnn.com/2021/01/21/us/amanda-gorman-hamilton-speech-impediment-trnd/index.html

”inception”は「始まり、開始」。

”heir”は「継承者」。

So while once we asked, how could we possibly prevail over catastrophe? 
Now we assert how could catastrophe possibly prevail over us?
We will not march back to what was, but move to what shall be a country that is bruised but whole, benevolence but bold, fierce and free.

かつては、どうして破滅に打ち勝つことができるだろうと思っていた。
今は、どうして破滅は私たちに打ち勝つことができるだろうと断言する。
私たちは、以前の状態に戻りはしない。そうではなく、あるべき状態に進めるのだ。傷つきながらも一つにまとまった、博愛に満ちながらも大胆な、激しく、そして自由な国へと。

”assert”は「断言する」。

”bruised”は「傷ついた」。
“benevolence”は「博愛、慈悲」。
“fierce”は「激しい」。

We will not be turned around or interrupted by intimidation because we know our inaction and inertia will be the inheritance of the next generation.
Our blunders become their burdens, but one thing is certain.
If we merged mercy with might, and might with right, then love becomes our legacy, and change our children’s birthright. 
So let us leave behind a country better than the one we were left.

私たちは、脅しによって戻ったり、中断したりしない。なぜなら、私たちの無為と怠惰の結果は次の世代に引き継がれると知っているからだ。
私たちが失敗すれば、それは次の世代の負担となる。しかし一つ確かなことがある。もし慈悲を権力と合わせ、権力と権利を合わせることができれば、愛が遺産となり、私たちの子供たちの生まれながらの権利となるだろう。
だから、私たちに残された国よりも良い国を残そう。

“intimidation”は「脅し、脅迫、威嚇」。
“inertia”は「慣性、惰性、無気力」。
“inheritance”は「継承」。

”blunder”は「大失敗、失態」。

“birthright”は「生まれながらの権利」。

“mercy”と”might”、”might”と”right”、”love”と”legacy”は、それぞれ韻を踏んだ対比となっています。

With every breath, my bronze pounded chest,
we will raise this wounded world into a wondrous one. 
We will rise from the gold limbed hills of the West.
We will rise from the wind swept to Northeast where our forefathers first realized the revolution. 
We will rise from the lake-rimmed cities of the middle Western States.
We will arise from the sun baked South. 
We will rebuild, reconciled and recover.

私のブロンズ色の胸が高鳴り息をするたびに、この傷ついた世界を素晴らしいものへと変えていく。
私たちは立ち上がる。西部の黄金の丘陵から。
私たちは立ち上がる。祖先が最初に革命を実現した北東部へと吹きさらす風から。
私たちは立ち上がる。中西部の湖畔の街々から。
私たちは立ち上げる。日に焼ける南部から。
私たちは再建し、和解し、回復する。

”pound”は「(心臓が)激しく高鳴る」

”limbed”は「〜の肢のある」。

”forefather”は「祖先」。

And every known nook over our nation, and every corner called our country, our people diverse and beautiful will emerge, battered and beautiful. 
When day comes, we step out of the shade of flame and unafraid, the new dawn balloons, as we free it.
For there was always light. 
If only we’re brave enough to see it.
If only we’re brave enough to be it.

そしてこの国の全ての片隅から、多様で美しい人々が現れる。打ちのめされた美しい人々が。
朝が来ると、炎の影から、恐れることなく、一歩踏み出す。新しい夜明けは、私たちが解き放てば、どんどん膨らんでいく。
光はいつもそこにあるのだから。
もし光を見る勇気があるのなら。
もし光になる勇気があるのなら。

ここの”when day comes”は、冒頭の”when day comes”と対をなします。

冒頭の”when day comes”では果てしない影の中でどこに光を見つけられるのかと絶望と不安を語りましたが、最後の”when day comes”では、影から踏み出し、光はいつもそこにあると、希望を示します。

そして自分たちが自ら光になるのだという決意を示します。

まとめ

分断から団結へ、不安から希望へ、そして自分たちが未来を切り開くという決意。

理想主義かもしれませんが、今は自分第一ではなく、相手を思いやる理想主義こそが求められているのだと思います。

こういう時代だからこそ、心に響きました。

彼女が将来、本当に大統領になる日を見てみたいですね。

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