2021年のベルリン国際映画祭(Berlin International Film Festival)で、濱口竜介監督の「偶然と想像」が銀熊賞審査員グランプリ(Silver Bear Grand Jury Prize)を受賞!おめでとうございます‼︎
ベルリン国際映画祭とは
ベルリン国際映画祭(Berlin International Film Festival)、通称ベルリナーレ(Berlinale)は、通常例年2月に開催される映画祭で、カンヌ国際映画祭、ベネティア国際映画祭と並び、世界3大国際映画祭の一つといわれています。
他の映画祭と比べつと社会派の作品が集まる傾向が強いといわれ、また新人監督発掘に努めているともいわれています。
歴史
1951年開始。当初は、東ドイツに囲まれた西ベルリンで、西側の芸術文化をアピールする狙いもあったようです。
賞
コンペティション部門、パノラマ部門、エンカウンターズ部門、ジェネレーション部門、レトロスペクティブ部門、フォーラム部門に分かれていますが、いわゆる賞が授与されるのはコンペティション部門です。
主な賞には以下があります。
金熊賞:Golden Bear for Best Film:最優秀グランプリ
銀熊賞・審査員グランプリ:Silver Bear Grand Jury Prize
銀熊賞・審査員賞:Silver Bear Jury Prize
銀熊賞・監督賞:Silver Bear for Best Director
銀熊賞・主演俳優賞:Silver Bear for Best Leading Performance
銀熊賞・助演俳優賞:Silver Bear for Best Supporting Performance
銀熊賞・脚本賞:Silver Bear for Best Screenplay
銀熊賞・芸術貢献賞:Silver Bear for Outstanding Artistic Contribution
金熊賞が最優秀賞で一つだけで、銀熊賞はその次ですが、銀熊賞は分野毎にいくつにも別れているのが特徴です。
ただ銀熊賞の中でも、上記順番でプレスリリースに表示されており、この順番がそのまま賞の序列になっていると考えてよいでしょう。
そう考えると今回の「偶然と想像」は実質2番目と高い評価を得たといえます。
過去に受賞した日本映画
過去の日本映画の受賞作(金熊賞、銀熊賞)は以下の通りです。(賞名は現在と異なるものがあります)
1958年:銀熊賞・監督賞:今井正監督(純愛物語)
1959年:銀熊賞・監督賞:黒澤明監督(隠し砦の三悪人)
1963年:金熊賞:今井正監督(武士道残酷物語)
1963年:銀熊賞・女優賞:左幸子(にっぽん昆虫記)
1975年:銀熊賞・女優賞:田中絹代(サンダカン八番娼館望郷)
1986年:銀熊賞・芸術貢献賞:鑓の権三(篠田正浩監督)
1986年:銀熊賞・審査員グランプリ:海と毒薬(熊井啓監督)
2002年:金熊賞:千と千尋の神隠し(宮崎駿監督)
2010年:銀熊賞・女優賞:寺島しのぶ(キャタピラー)
2012年:銀熊賞・短編部門:グレートラビット(和田淳監督)
2014年:銀熊賞・女優賞:黒木華(小さいおうち)
そうそうたる作品が並んでいますね。
いくつかはBluーrayでも購入できます。
この機会に見直してみてはいかがでしょうか?
偶然と想像
監督
濱口竜介監督は1978年12月生まれの42歳。
東京大学文学部卒業後、助監督を経て、東京芸術大学大学院映像研究科へ。
その後、東北記録映画三部作等制作。
商業映画は2018年の「寝ても覚めても」が初。
2020年のスパイの妻(劇場版)では脚本を担当。
英題
英語のタイトルは、‘Wheel of Fortune and Fantasy‘(運と想像の輪)です。
直訳ではなく、Fで韻を踏んでいます。
WheelもHWで始まる音で、 HWーFーFと続く音の響きが心地いいですね。
内容
3編からなる短編オムニバス形式の映画です。
一つは「魔法(よりもっと不確か)」。モデルの芽衣子が、親友でヘアメイクのつぐみが気になっていると話した男性が、自分の元カレ和明だったと気付き、どうするべきか思案する話。
もう一つは「扉は開けたままで」。芥川賞を受賞した50代の大学教授瀬川に落第させられた学生佐々木が逆恨みして、教授を陥れるため、女子学生奈緒に研究室を訪ねさせる話。
三つ目は「もう一度」。仙台で20年ぶりに再開した2人の女性夏子とあやが、高校時代の思い出話に花を咲かせつつも、現在の状況の違いから次第に会話がすれ違っていく話。
いずれも「偶然」と「想像」という共通のテーマで語られます。
出演
魔法(よりももっと不確か)は、芽衣子:古川琴音、和明:中島歩、つぐみ:玄理。
扉は開けたままでは、瀬川:渋川清彦、奈緒:森郁月、佐々木:甲斐翔真。
もう一度は、夏子:占部房子、あや:河合青葉。
まとめ
大きな予算で大掛かりな宣伝をするわけでもなく、少人数のスタッフで作り上げたこうした作品でも、内容が良ければしっかりと評価されて賞を取る。
今回の受賞は映画関係者にとっても励みになったのではないでしょうか。
商業主義の大作もそれはそれで面白いですが、やはり日本映画の質の高さは、こうした小粒の作品にこそ現れる気がします。
濱口監督の作品には、これからも注目ですね。